ストリート・フォト用レンズ考


写真撮影をまったくしなくなったのはいつ頃のことだったろうか。9.11前には海外取材に行かなくなっていたし(1人旅に飽きたというのも大きかった)99年にニューオリンズに行ったときはハロウィンの時期だったが写真を撮った記憶がない。ということは1998年頃にはカメラを持ち歩かなくなっていたと考えられる。撮影しなくなった理由のひとつは機材が重くてかさばることだった。

もう一度写真を撮ろうと思うようになるまでには、かなり長い時間がかかった。最初のきっかけは東京都写真美術館で観たジョセフ・クーデルカ展だったと思う。ウェブサイトを見ると2011年の5月〜7月開催とある。

https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-1353.html
(プラハ侵攻 1968。取材で恵比寿へ行ったとき駅にポスターが貼ってあって、なんとなく観にいった)

写真展を観たあと、写真集も購入した。Amazonの記録によると5月の中頃に購入しているそうなので、おそらく写真美術館に行ったのはGW前後だろう。


(画像Via Amazon。 写真集はすぐ絶版になってしまう。この本も古本でしか手に入らないようだ)

その後、写真家に関するドキュメンタリーも何本か観た。『マグナム・フォト 世界を変える写真家たち (1999)』とか『アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶 (2003)』あたりが入口だったように思う。

その後も『アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生 (2007)』『ビル・カニンガム&ニューヨーク (2010)』『ヴィヴィアン・マイヤーを探して(2015)』など写真家に関するドキュメンタリーが出るたびに気になって観た。
あと、これ。

並行して子どもの頃に読んだ写真入門書も古本で手に入れている。個人的にもっとも印象に残っているのは楠山忠之著『誰も言わなかったカメラ術』(青春出版社・プレイブックス)。最初の一眼レフにオリンパスOM-1を買ったのは、この本の影響だった。

調べてみると楠山忠之さんは報知新聞写真部を経てフリー、その後沖縄の日本復帰、ベトナムのサイゴン陥落などを撮影、陸軍登戸研究所の映画も撮っており著作などもある。奥さまは石垣島出身で、八重山で暮らしていた時期もあったはずだ。なんというか今の自分が興味あるものと、かなり重なり合う部分が多い。

石川文洋さんの『戦場カメラマン』、岡村昭彦『生きること死ぬことのすべて』など、ベトナム戦争を撮った日本人カメラマンの著作、写真集に触れて「自分にとって写真を撮るってどんな意味があったのだろうか」とぼんやり考え始めたのが2016年くらい。図書館で写真集もいろいろ借りてみた。

というような経緯があって2017年の始め頃、一眼レフを手に入れた。価格、画素数とセンサーの性能、高感度時のノイズの少なさなどでボディはEOS 6D一択。キャノンを選んだのは以前使っていたフィルムカメラの機材がそっくりそのまま使えると思ったからだが、実際には三脚、標準ズーム程度しか使えなかった。(ストロボはフルマニュアルでなら使えるので室内でブツ撮りするときにたまに使う→バウンスがほとんど)

フィルムカメラはEOS 5というのを使っていて、これに標準ズームとしてついてきたキットレンズはEF28-105mm F3.5-4.5 USM。95年に購入。


http://global.canon/ja/c-museum/product/ef314.html

昔はこれと70-200mmの2.8(白玉レンズ)を使っていたのだが、遠くから人物を抜いて撮ったりステージ写真を撮ったりしないかぎり、こんなに長くて重いレンズは必要ない。そこで標準の単焦点レンズを買い足そうと思ったのだが低予算で、となるとなかなか選択が難しい。キヤノンの単玉レンズでは50mmや45mmが人気らしいのだが、画像のシャープネスなどを気にしなければ、この画角は標準ズームでカバーできてしまう。ということでEF24mm F2.8 IS USMというレンズを購入してみた。ボディともども中古品。


http://cweb.canon.jp/ef/lineup/wide/ef24-f28-is/index.html

EF24mm F2.8 IS USMは2.8とまあまあ明るく手ブレ補正機能も付いている。定価8万と高価なわりに中途半端なスペックなので、人気はまったくない。ところが自分にとってはけっこう理想に近いレンズなのである。

1)狭い室内で撮影するときに便利
2)手ブレ補正があるので明るくない場所でもけっこう撮れる(ボディ側で増感すれば、ほぼフラッシュ要らず)
3)人混みや街中でさっと撮るような用途に適している
4)画角が広いのでノーファインダーで撮ってもそこそこいける
5)フィルターサイズが58㎜で標準ズームと共通

欠点は
1)50mm、35mmと比べて画角が広いので、余計なものが入ってしまう(構図がとりにくい)
2)35mmと比べてさらに数歩近づかないと「寄り」が撮れない

といったところ。YouTubeに24mmと35mmの作例ビデオがあった。


(こちらが24mm)


(でこっちが35㎜)

比べてみると、やはり35㎜の方が標準レンズの感覚に近い。24㎜の方は人物をかなり寄って撮っているが、あそこまで大きく写し込むためには被写体に触れるくらい近くで撮らないといけないだろう。でもそこが面白いと思う。24㎜の作例は比較的低いアングルのものが多い。ファインダーを覗いて撮っているなら中腰で屈んで撮るか、二眼レフのように上からのぞき込む「アングルファインダー」を使っているのかもしれない。

個人的にはアングルファインダーを使うのは、やや面倒だと感じる。あいにくぼくは身長が平均よりも高いので、人混みの中でファインダーを覗いてカメラを構えると上から見下ろすようなアングルになってしまう(両手を掲げてハイアングルから撮るのは面白そうだ)。これを避けるためにはどこかに腰掛けるか、腰のあたりでカメラを構えてノーファインダーで撮ればいい。そうやって撮った写真のなかに、けっこう面白いものがあることもわかった。



(上は砂浜についたカニの足跡、下は那覇の公設市場周辺)

今のところファインダーを覗いて撮るときはおもに28-105㎜、狭い室内およびノーファインダーで撮るときは24㎜と、なんとなく使い分けている。

撮影をやめていた頃、カメラマンや写真好きの人に会うたび「いま買うとしたら、どんなカメラがいいんでしょうか」とよく訊いていた。スマートフォンの内蔵カメラでも十分よく撮れるし、デジタルカメラは必要ないよ、という人もいたし、フルサイズでなければどれを買っても同じだ、という人もいた。どちらもよくわかる。

個人的結論としては「手頃な価格、かつ高感度ノイズに強いフルサイズ」で正解だったと思う。フィルムカメラでずっと撮影していたこともあり、ファインダーを覗いて撮るときと、スマートフォンの液晶画面を見ながら撮るときとでは構図の取りかたがまったく違うと感じるからだ(当社比)。レンズによる画角の違い、質感の違いも思ったより大きい。

機材は相変わらず重くてかさばるけれど、フラッシュや三脚、望遠レンズを持ち歩かなくなったことでかなり減量はできた。問題はカメラバッグだが、これについてはまた次回。