「Hideaway」1981&1984バージョン比較


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前にどこかで書いたような気もするのだが、このブログではまだだったので、デヴィッド・サンボーンの「Hideaway」について書く。オリジナル・アルバムは1980年2月15日リリースだけれども、ここで話題にしたいのはスタジオ盤ではなく、ライブ・パフォーマンスの方である。

これは1984年のモントルー。今さら言うまでもないのかもしれないが、毎年6月にスイスで開催されているジャズ・フェスで、このときのパーソネルは以下のとおり。

David Sanborn (saxophone)
Larry Willis (keyboards)
Hiram Bullock (guitar)
Tom Barney (bass)
Buddy Williams (drums)
special guest Rickie Lee Jones (piano & vocals)

ギターはスタジオ盤でも弾いているハイラム・ブロック。この人、ニューヨークのスタジオミュージシャンというイメージが強いが、じつは生まれは大阪堺市である。ベーシストのウィル・リーとは兄弟みたいな関係で、ライヴでのケミストリーも非常によい。

(曲はWindow Shoppin’)

上の演奏はManny’s Car Washという今はなきライヴハウス(ヨーロッパで言うところのヴェニュー)での演奏(1999年)だが、同じハコで1996年に収録されたライヴアルバムもある。タイトルはそのまんまで「Manny’s Car Wash」。


(日本でも輸入盤を入手可能)

ウィル・リーによると、このライヴは音響最悪で自分の演奏すらよくモニターできない状態だったとか。ところが録音された音源を聴いてみたらライヴ感のある、わりといい演奏だったので、ライヴアルバムとしてリリースすることになったらしい。

話が少し脱線したが、「Hideaway」の話に戻る。こちらは1981年のモントルーでの演奏。

このときのパーソネルは、

David Sanborn (saxophone)
Marcus Miller (bass)
Mike Mainieri (vibraphone)
Neil Larsen (keyboards)
Robben Ford (guitar)
Ricky Lawson (drums)
Lenny Castro (percussion)

という顔ぶれ(ほとんどオールスター・キャスト)で演奏はものすごくタイト。1984年の方も上手いが、バンドアンサンブルという面ではこちらの方がまとまっているというか、いい意味での緊迫感がある。アレンジも若干異なっていて、1981年はベースソロ→ギターソロとなるのに対して、1984年はギターソロ→ベースソロという展開になっている。

1981年の演奏がいいのは、ひとつにはマーカス・ミラー(Bass)の存在が大きい。重量感のあるベースラインがバンド全体をドライヴさせていって、その上にキレのいいリズムが乗るわけだが、そのメンツがイエロージャケッツのロベン・フォード(G)、リッキー・ローソン(Dr)にラーセン=フェイトンバンドのニール・ラーセン(Key)なのだから、これは悪いわけがない。個人的にはロベン・フォードのギター、とくにリズムギターが上手いのに感心した。

フュージョンが最初の全盛期を迎えたのは1970年代後半から1980年代初期にかけての数年間(個人的な印象では1978〜1980年くらい)だが、この演奏はだいたいその直後くらいである。だが、なぜこの時期がそうだったのかと訊かれても当のミュージシャンたちは「そういうタイミングだったから」「みんながノってる時期だったから」などとしか答えられないのではないだろうか。

40〜50年代のジャズ、60年代のロックと同じく、70年代末はスタジオミュージシャンが輝いた時代だったのだ、と書いてしまうとキャッチーだし格好いいのだが、おそらくそれだけでは正解と呼べない気がする。当時の音楽の流行(タイミング的にはソウル→ディスコから80年代ポップの狭間)、風俗、ミュージック・ビジネス、スタジオ・ミュージシャンの扱われかた、スタジオや楽器関連のテクノロジーなどが、いろいろな形で影響し合っていたのではないだろうか。

そういう切り口でフュージョン黎明期を解説したら面白いんじゃないかと思う。誰か書いてくれないでしょうか。