「名もなき人たち」へのシンパシー(その1)


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ここ数年「名もなき人たち(Unsung Heroes)」のことが気になっている。立派な仕事、すばらしい仕事をしながらも歴史や世間に埋もれてしまった(しまっている)人たちのことだ。ここ数年関わっていた仕事のせいかもしれない。

それ以前からその兆候はあって、きっかけは何本かの映画を観たことだった。最初は『Standing in the Shadows of Motown(邦題:永遠のモータウン)』2002年。モータウンのヒットを生み出したスタジオA、そこで演奏していたミュージシャンたちを追ったドキュメンタリーだ。原題はフォートップスのヒット曲「Standing in the Shadows of Love」をパラフレーズしたもの。

冒頭にレコード店内でのインタビューが収められている。音楽マニアを自称する客に「音楽のことはかなり詳しい方ですか」「モータウンの音楽は好きですか」などと訊いたあと、インタビュアーがつづけてこう質問する。「シュープリームスやスモーキー、マーヴィン・ゲイのレコードで誰が演奏していたか知っていますか?」誰も答えることができず、みな口々に考えたことさえなかった、と言う。「どのレコードでも同じバンドが演奏していたのです。The Funk Brothersというのですよ」と教えると、それって誰なんだい、今でも演奏してるのかい、という質問が返ってくる。導入部としてはなかなかよくできている。

ファンクブラザーズのメンバーはこの映画が作られる前に何人もが亡くなっていた。撮影後にもリチャード“ピストル”アレン、ジョニー・グリフィスがこの世を去っている。ぎりぎり間に合ったという感じではあるが、それでももの寂しさは拭えない。映画にも収められているが、店で流れた「My Girl」のイントロを聴いたロバート・ホワイトが「このギター、ぼくが弾いたんだよ」と言おうとしてやめた、というエピソードはとくに哀しい。

そういえばファンク・ブラザースのベーシスト、ボブ・バビットからは教則本を買ったことがある。彼のウェブサイトで直接注文した。100ページあまりの軽い読み物と楽譜などが収められたもので、送られてきた封筒を見ると発送の日付は2011年9月2日だった。ボブ・バビットは2012年7月に脳腫瘍で亡くなっている。


(なんともコメントしようのない表紙。表2部分には自筆のサイン入り)

その次が『Don’t Stop Believin’: Everyman’s Journey(邦題:ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン)』。フィリピンのシンガー、アーネル・ピネダがYouTubeの動画がきっかけでジャーニーのヴォーカルに大抜擢されるという一種のドリーム・ストーリーである。

いい話ではあるし、代役ヴォーカルと呼ばれることへの葛藤、アジア人であることの引け目など、ハッピーなだけではない背景も描かれるのだが、これは「名もなき人」というよりは「名もなき人がロックスターになった話」と呼ぶ方がやはりしっくりくる。面白いけど、なんかちょっと違うよな、と思っていたところで次の映画を観た。『Searching for Sugar Man(邦題:シュガーマン 奇跡に愛された男)』という作品。


(DVDジャケット 画像via Amazon)

「奇跡と感動の物語」という惹句を使っているが、その後のできごとまで考えると本当にそうだろうか、と思わずにはいられない。映画のプロダクションと後日談については、次のエントリで。

「名もなき人たち」へのシンパシー(その2)