フィレンツェ近郊の隠れ宿ガイド


イタリアのトラベルガイド、とくに日本で出版されている書籍はローマ、ミラノ、ベネツィア、フィレンツェあたりをカバーして他はちょっと触れるだけ、というものが多い。海外のガイドを見るとナポリ、ポンペイ、アマルフィなどの南イタリアに加え、チンクエテッレ(北西海岸の小さな漁港エリアでとくにアメリカの観光客に人気)、ヴェネト(ロミオとジュリエットのヴェローナもこのあたりである)、トスカーナ地方の情報なども載っているが、エミリアロマーニャ州となると、どの本もあまりあてにならない。で、トスカーナ、エミリアロマーニャといったキーワードで検索して、いろいろ書籍を探したのだが、アグリツーリズモについてわりとしっかり書いてあったのがこの本。


『世界でいちばん贅沢なトスカーナの休日』 石井みゆき著

2006年の出版だから、もうすでに10年以上前の情報ということになる。アグリツーリズモは最低5泊から、なんていうところも多いのだが、この本に載っているのは1〜2泊から滞在できる宿ばかりでアクセスも比較的しやすいところが多い。せっかくなのでアグリツーリズモにも泊まってみようということで、リストのなかからフィレンツェの近くにあるPodere Valdibotteという宿を予約した。公式ウェブサイトのほか、トリップアドバイザーやAir B&Bにもページがある。(Facebookにもページがあるようだが、こっちは放置に近い状態のようだ)

公式ウェブサイト
http://poderevaldibotte.it/condizioni.html

トリップアドバイザー
https://www.tripadvisor.jp/Hotel_Review-g187895-d1510483-Reviews-Podere_Valdibotte-Florence_Tuscany.html

(Air B&Bはリンク貼れないみたいなので検索でお願いします)

一番手っ取り早いのは公式ウェブサイトからメールで問い合わせるという方法だが、残念ながら日本語には対応していない。対応言語は英語、イタリア語、フランス語、ドイツ語の4カ国語。使ったことがないのでなんともいえないがAir B&Bは日本語表記もあるので、そちらから予約するというのもひとつの手ではあるだろう(ただし宿に行っても日本語は通じない)。支払いは現金のみでカード使用は不可。部屋は3部屋しかなく、1階にあるダブル(バスタブあり)は1泊80〜90ユーロ。

宿へのアクセス方法は大きくわけて3通り。

1.レンタカーで直接現地まで行く
2.フィレンツェの空港まで迎えに来てもらう
3.フィレンツェの駅前からトラム(路面電車)のLine1に乗って終点のヴィラ・コスタンツァ(VILLA COSTANZA)まで行き、そこでピックアップしてもらう

今回はシエナからバスでフィレンツェSMN(サンタ・マリア・ノヴェッラ)駅まで行ったので、3の路面電車利用にした。トラムの駅はSMN駅の西側にある。駅名はALAMANNI STAZIONE(アラマンニ・スタツィオーネと読むのだろうか)。チケットはホームにある自動販売機でも買えるが、SMN駅を出て階段を降りたところにあるタバッキでも購入可能。


(英語表記にも切り替え可能だが、なんとなく信用ならない感じのくたびれた券売機)

(Line1の路線図)

例によって電車に乗ったら刻印機でのバリデーションをお忘れなく(検札はこなかったがバリデーションを忘れると高額な罰金を払わなければいけない)。電車に乗ったら電話をしろと言われていたので宿に電話を入れる。終点のヴィラ・コスタンツァまでは約20分。その時間を見計らってオーナーのHelene(ヘレーネ)が迎えにきてくれるという段取りだ。

ヴィラ・コスタンツァはフィレンツェ市街の近郊、スカンディッチという街にある。宿まではここからクルマで片道10分足らず。途中からは未舗装の山道なので知らずにレンタカーで行くとちょっとびっくりするかもしれない。

宿はこんな感じの建物で、馬(元競走馬)が二頭と犬が三匹いる。プールもあって夏は泳ぐことも可能。

宿を切り盛りしているのはヘレーネとジャンカルロの2人。奥さんのヘレーネはオーストリア出身で旦那さんのジャンカルロは元エンジニア。2人はヘレーネが大学に通っているときにボローニャで知り合ったということだった。

ここの魅力はとにかくカジュアルなところ。着いたとたんに農場で採れた果物を食え、ワインはいるか、コーヒー飲むかと訊かれ、テラスで他の宿泊客を交えて雑談タイムが始まる。B&Bなので当然朝食はつくのだが、事前に頼めば夕食も出してくれる(頼まなかったが、おそらく昼食も出してくれると思う)。夕食は1人25ユーロで飲み物込み。自家製ワインなどが飲み放題ということで、フィレンツェ市内のレストランなどと比較すると、これは割安じゃないかと思う。

朝食も夕食もリビングルームの大きなテーブルで全員揃って食べるというスタイルだ。料理はトスカーナ地方の家庭料理でハム(プロシュート)やチーズなども、もちろん食卓に並ぶ。会話はそのときいるメンツにもよるのだが、各国からやってきた人が共通語として話すのは、やはり英語であるようだ。


(これは初日の夕食。食器がセットされたところ)


(こっちは翌日の朝食)

宿は内装も環境もこれ以上なくカジュアル、日本人のセンスからいくと完全な脱力系である。民宿というよりは知り合いの家に泊まりにきたような感じで、大げさなサービスはなにもない。部屋にはタオルはあるが、アメニティやドライヤーはない。建物の内部はヘレーネとジャンカルロの手作りだから、立て付けが悪いところもままある。日本からもっていったレンタルWiFiの電波も入らない(WiFiの電波は飛んでいて、言えばパスワードを教えてくれる。無料)。一流ホテルのような清潔で高級な内装、買い物に便利な立地、そういうものを求めている人には、この宿は正直向かないと思う。

お薦めしたいのは旅慣れた人、他の宿泊客や宿の主人と会話を愉しみたい人。何もないかわりに終日リラックスして過ごせる。ヘレーネとジャンカルロの気取らない人柄も最高だ。時期によっては葡萄やオリーブの収穫を一緒にすることもできるし、早起きを厭わないのであればトリュフやポルチーニ狩りに行くこともできる。


(キノコ探しの名人、テディ)

ここでは何もしないで過ごすのが目的だったので、滞在中(2泊)は近くを散歩するくらいでほかのことは何もしなかった。(数時間のハイキングで周辺の街へ行くこともできるが、なんの目印もない農道なのでGoogleマップのオフラインマップ必須)


(犬のテディに案内されながらの散歩)

帰りはフィレンツェの空港までふたたびヘレーネに送ってもらう。宿から空港までは15分くらい。フィレンツェ市街や空港からちょっと山へ入っただけであの環境というのは、なかなかないと思う。完璧なサービスよりも宿での会話と楽しい食事。多少虫がいても気にしない。犬好き。人好き。そういう人にぜひお薦めしたい宿である。