ヒットメーカーと呼ばれて


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chicというバンドをディスコ・グループだと思っている人はけっこう多いだろう。個人的にはR&B系ファンク・グループと呼ぶ方がしっくりくるが、興味のない人にとっては「chic? 70年代にディスコでよく掛かってた。懐かしいね」くらいの存在でしかないのかもしれない。

数年前、BBCが「Nile Rogers The Hitmaker」と題したドキュメンタリーを製作した。ナイルの生い立ち、パートーナーとなるベルナルド・エドワーズとの出会いとchic結成、ヒット曲の「Le Freak」誕生秘話など、いつものエピソードだが、関係者へのインタビューもしっかりと収録されており、バランスよくまとまっている。初期のビデオ映像(かなり劣化したビデオテープ)なども紹介されている。基本、一般視聴者向けではあるけれど、BBCのドキュメンタリーはいつも平均点が高い。取材、編集ともかけるべき手間が、きちんとかけられているという印象だ。

chicはディスコブームの終焉とともに低迷期に入るが、ナイルとベルナルドは80年代に入ってからも楽曲提供、プロデュースなどを精力的におこなった。シスター・スレッジ、ダイアナ・ロス、マドンナ、デュラン・デュラン、パワー・ステーション、デヴィッド・ボウイ、ミック・ジャガーなど、アーティスト名を挙げていけばきりがないほどだ。

番組のタイトルにもなっている「ヒットメーカー」ということばには、ふたつの意味があると思われる。ひとつは数々のヒット曲を世に出した裏方としての仕事ぶり。そしてもうひとつはナイルのメインギター、ハードテイルストラトにつけられたニックネームだ。

http://www.nilerodgers.com/about/the-hitmaker

番組のなかでナイルも語っているが、デヴィッド・ボウイのプロデュースを受けたときはレコード会社との契約すらない状態だったという(ボウイも同じ境遇だったらしい)。このときつくられたのがアルバム「Let’s Dance」だった。デュラン・デュランのジョン・テイラーが「8小節聴いただけでナイルのプレイだとわかる。そんなギタリストはなかなかいない」と述べているが、これにはまったく同感だ。しかもナイルの場合、カッティング・プレイだけで自分だとわからせてしまうのだから、すごいとしか言いようがない。

ベルナルド・エドワーズは、ぼくにとって間違いなくフェバリット・ベーシストのひとりだ。超絶スラップや早弾きはしないけれど、グルーヴ感のあるプレイで曲を引っ張っていく。「Good Times」を始めとして印象的なラインも多い。親指をピックのように使う「Chucking」というテクニックを使うのも特徴で、これは初期のヒット曲「Everybody Dance」「Dance Dance Dance」などで聴くことができる。

ちなみに好きなベーシストを3人選べと言われたらジェイムス・ジェイマソン(The Funk Brothers)、フランシス・ロッコ・プレスティア(Tower of Power)、そしてベルナルド・エドワーズを挙げると思う。一番好きなのは誰かと訊かれると困ってしまうが、どのプレイヤーになりたいかと言われたなら、おそらくベルナルドだと答えるだろう。ジェイマソンは言うまでもなく偉大だが、彼よりも世代が新しく、よりファンク色が強く、ジェイマソンと同じように大胆なところに惹かれる。

それにしてもモータウンの関係者が「ジェイムス・ジェイマソン」と発音しているのに、なぜ日本語表記は「ジェームス・ジェマーソン」なのだろう。そういえばベルナルドも「バーナード・エドワーズ」と表記されているが、ナイルは「ベ(ル)ナード」と発音している(ルはRの発音で弱め)。カタカナ表記ってどのような過程で決定されるのか、本当に不思議である。