フィル・リノットと頭のなかで読み換える〈Part2〉


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ダブリン市内は路面電車、コノリー駅からDARTに乗り換えて約20分、電車はSutton駅に着く。終点となるHowthのひとつ前の駅で、プラットフォームに降りると目の前にはこんな風景が広がっていた。寒々しく、いかにもアイルランドといった雰囲気である。

Suttonの駅からフィルの墓所があるSt. Fintan’sセメタリーまでは徒歩で20分ほど。路線バスも一応あるのだが、元々の本数が少ないうえに土日は運休とのことだった。この日は日曜だったのでバスは走っていない。駅前にタクシースタンドでもあればな、と思ったのだが、駅から一歩出た瞬間にその考えは甘かったと気づかされた。ものの見事になんもない。

ここからGoogle Mapsとプリントアウトしたブログの情報を頼りに歩く。ポケットから取り出したA4のコピー用紙には、道順がかなり細かく記されている。

サットン駅を出て、まず見つけなければいけないのはStフィンタン教会だ(この時点でフィルの墓は教会の敷地内にあると思っていた)。教会はどっちの方向かたずねてみると徒歩10分くらいとのこと。教会に着いて、しばらくまわりをうろうろしたのだが(教会の中では礼拝がおこなわれていた ※この人も日曜日の朝に出かけていったのだ)、教会の敷地内に墓所や墓石は見当たらない。


(St.Fintan教会の外観。駅から歩いていくと左側にある)

ブログ主は通りがかった地元の人に話しかけ、墓地は教会から1マイルほどいったところにあると教えてもらう。St.Fintan’sセメタリーはけっこう大きな墓地でふたつの区画にわかれていた。入口で花を売っていた若者にフィル・ライノットの墓はどこかとたずねると、すぐに教えてくれたそうだ。(ぼくが訪ねて行ったときもおじさんが花を売っていて、小さな花束を買った)

“前に見える道をまっすぐ突き当たりまでいって、右に曲がる。その道の突き当たりから4列戻って道から3番目がフィルの墓だよ” 正式にはSt. Polanセクションのプロット13というのが、フィルの墓がある場所だ。見つけるのは、それほど難しくない。


説明どおりに歩くとフィルの墓はすぐに見つかった。ファンからの贈り物、花などが沢山置かれているので、遠くからでもすぐにそれとわかる。

10代の終わり頃、1年間ほとんどThin Lizzyの同じアルバムだけを聴いて過ごしたことがあった。それは「Black Rose」でも、The Boys Are Back in Townのライヴバージョンが収録された「Live and Dangerous」でもなく、解散ツアー用に録音した(ある意味やっつけ仕事の)ラスト・アルバム「Thunder and Lightning(1983年)」だった。

聴いていたのはおそらく84年のことで、それから2年ほどしてフィルは亡くなるわけなのだが、当時は正直「アルコールとドラッグ中毒だったらしいから、仕方ないのかな」くらいにしか思わなかった。それから30年後、アイルランドを訪ねたついでにフィル・ライノットの墓参りをするのだから、人生何が起こるかわからない。しかもこのときのアイルランド行きででもっとも印象に残ったのは、この寒くて冴えないSutton詣でだったのである。

ダブリンの街を歩いているとヴァン・モリソンの曲がどこからか聞こえてくる。そのたびにヴァン・モリソンはダブリンという街の体臭のようなものだなといつも思う。一方、フィルがソロアルバムで歌った「Old Town(コアーズもカバーした)」のPVにもダブリンの街並みが、これでもかというくらい登場する。

思うに、この曲は彼がダブリンという街に贈ったラブソングなのだ。というわけで、ぼくがダブリンの街を思い出すとき脳内再生されるのは、ザ・コミットメンツの「Destination Anywhere」とフィル・ライノットの「Old Town」である。これは当面変わらないような気がする。

「Old Town」のドキュメンタリー