市場の名物男、三者三様
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いわゆるパック旅行というものには、ほとんど行ったことがない。ヨーロッパ旅行って高いんですよね、と言われて各種ツアーの料金をウェブサイトで覗いてみると、あまりに法外な価格設定でこっちがびっくりしてしまう。
それ以上に驚くのは過密スケジュールだ。行程表に「観光地での自由時間1時間30分その後バスにて移動4時間」などと書いてあって、これは旅と呼べるのだろうか、記念写真さえ撮れればそれでいいのだろうか、などといらぬ心配をしてしまう。
広場に面したカフェでぼーっとしていると、そんなツアー客一行が歩いていくのを目にすることがある。贅沢ってなんだろうか、とふと思ったりする。
(こっちは彼らの予算の半分にも満たない貧乏旅行だが、時間的余裕だけはある)
旅行に行っても観光地を丹念に見てまわることは一切なくなった。絵はがきで見たとおりの風景を写真に撮るより、市場に行ったり、カフェでだらだらと街行く人を見ている方が面白い。電車、地下鉄、路面電車、バスなどに乗るのも好きだけれど、移動はおっくうなので、あまり頻繁に出かけたくはない。なんというか、とても怠惰な旅行スタイルである。
行き先は街の雰囲気が良さそうだからとか、市場のあの店に行ってみたいから、というような些細なことが決め手になることが多い。そして現地に行くと、ほとんどなにもしない。
現地で各種フェスティバル、イベント、お祭りなどがあればさらに言うことないのだが、ホテルの予約が取りにくいのと料金が数倍になることが多いのとで、貧乏旅行の自分にはいささかハードルが高い。
てなことを考えつつYoutubeを見ていたら、ものすごくインパクトのある店を発見した。イタリアはシチリア島にあるCaseificio Borderiというところ。
かなりの人気店らしく、トリップアドバイザーではシチリアにある547店舗中、堂々のランキング第1位。公式ウェブサイトはこちら。
http://www.caseificioborderi.eu/
本業はチーズやハムなどを扱うお店らしいのだが、おっちゃんがつくるサンドウィッチがここの名物。バゲットまるごとに山盛りの具を載せて価格は5ユーロだそうである。動画を見てもらえばわかるが、このおっちゃん、サンドウィッチを作っている途中でモッツァレラチーズをやおらさいの目に切り始めたりする。なにやってるんだろうかと思うと、それは並んでいるお客に試食させるためのものなのだ。しまいには通りを歩いている通行人にまで食え食えと勧めている。
サンドウィッチで採算取れているのか心配になってしまうのだが、なるほどこれは人気になるはずだと思った。
名物おやじ、と言われて頭に浮かぶのはバルセロナの市場にある「Pinoxto Bar」のJoan Bayen。ピノキオ、という店の名前はこの爺さんのニックネームであるらしい。(常にカメラ目線でサムズアップ。さすがに年取ったなと思うが、少しでも長く頑張ってほしい)
市場の名物男、ということならワン・ポンド・フィッシュマンなんて人もいた。
彼の名前はShahid Nazir。Xファクターなどのオーディション番組で人気となり、のちにメジャーレーベルからデビューした。PVはこちら。
2012年末の公開なのでPsyのGangnam Styleと同じ年のリリース。レーベルとしては二匹目のドジョウを狙ったのかもしれない。
http://www.bbc.com/news/av/world-asia-38501259/one-pound-fish-man-shahid-nazir-on-life-after-going-viral
上はその後のシャヒドを取材したニュース(2017年1月)。彼は学生ビザで働いていたため、その後の在留許可が取れず、パキスタンに強制送還されたという。ロンドンのクイーンズ・マーケットに戻ってまた魚を売りたいですか、というBBC記者の質問に対しては、こんな風に答えている。
「もちろん。クイーンズマーケットは私の人生を完全に変えた。それまで何者でもなかった私がスーパーヒーローになったんだ。まわりのみんなはそう言ってるよ」