問題。次の3曲に共通するのはなんでしょう。
映画『ロッキー4』でジェームズ・ブラウンが歌った「Living in America」
ザ・エドガー・ウィンター・グループの「Free Ride」
映画『ストリート・オブ・ファイヤー(Streets of Fire)』の劇中でドゥワップ・グループ「The Sorels(ソレルズ)」が歌う「I can Dream About You」
答えは、どの曲もダン・ハートマンの曲であるということ。ストリート〜のバージョンはヴォーカルもダン・ハートマンなのだが黒人グループが歌っていると信じている人も多いのかもしれない。
(本人によるパフォーマンス。ソウルトレインに出演したときの様子)
なんというかステージ上でのプレゼンス、という意味ではソレルズに及ばない感じではある。
ダン・ハートマンは1950年アメリカ・ペンシルベニア生まれ。72年にエドガー・ウィンター・グループにべーシストとして加入、「frankenstein」「Free Ride」などを収録したアルバム『They Only Come Out at Night』でアルバムチャート1位を獲得した。78年にはソロ名義の「Instant Replay」「Relight My Fire」でヒットを飛ばす。こうしたキャリアからか、ディスコ系アーティストと言われることが多いようだ。
こうした曲をダン・ハートマン本人が演奏したベスト・アルバムが『KEEP THE FIRE BURNIN’』でオリジナルの発売は94年。じつはこの年ダンはHIVにより43歳の若さで他界している。
このアルバムは彼の死後にいわゆる追悼アルバムとして出されたもので「炎を燃やし続けよう」というタイトルにも(アルバム収録曲のタイトルではあるが)そういう意味が込められているのだろう。(そういう意味ついでに言えば、邦題のベスト・オブ・ダン・ハートマンというタイトルはどうしようもない)
日本版ライナーノーツではおもにディスコ・ミュージック、DJの観点からダンの業績が語られているのだが、いきなりバニー・マニロウという誤植があったりしてあまり感心できない。(レコード会社の人は校正しないのだろうか)
「Living in America」ではJBバージョンで大幅カットされたスティーヴィー・レイ・ヴォーンのギタープレイが復活、全編オブリガードを聴くことができる。スティーヴィー・レイはYoutube時代前に手に入る音源は大体聴いていたのだが(スティーヴィー・ヴォーン名義やMTVアンプラグドの演奏含む)これは未聴だった。
JBのバージョンと聴き比べてみてもダンの方が勢いがあり、好印象。こちらを聴くとJBがカバーに思えてしまうくらい、と言ったらいいすぎだろうか。(JBがダンのガイド・ヴォーカル=仮歌を聴いてレコーディングしたという可能性はゼロではないだろう。このバージョンがガイド・ヴォーカルと同じだったとしたら面白いが、そのあたりは不明)
ところでダン・ハートマンがディスコ系アーティストという解釈には若干異議がある。たしかにソロ・キャリアはディスコ・チャートのヒットから始まっているが、ダン自身の音楽性はソウル、ファンクフレーバーも採り入れたポップロック路線であるように思えるからだ。話はそれるがナイル・ロジャースのChicも同じようにディスコ・グループと呼ばれるけれども、ナイル自身は「Chicはファンク・グループだと思っているよ」とインタビューなどで語っている。
そういう意味ではダンは「ブルー・アイド・ソウル」の系統に入れるべきミュージシャンなのでは、とぼくは思っている。そのあたりの検証については続編(その2)にて。