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11月に行った講演会とその感想 Part 3 (その2)

海外渡航レポートではひきつづきアメリカ・ロサンゼルス(6/28-7/3)、フランス国内一般公開に合わせて渡仏したパリ(9/3-9/9)の様子を紹介。

ロサンゼルスは6/29が「ASFIA(国際アニメーション映画協会)」での試写会、7/1はトークセッション、つづく7/2は「アニメエキスポ(@ロサンゼルス・コンベンションセンター)」で上映会というスケジュール。上映会とトークセッションは合計3回おこなわれたという。
(海外レポートの映像は写真撮影不可だったので今回は画像等、紹介できるものがありません。ご容赦ください)

以下、当日のコメントやエピソードからいくつか抜粋。

フランスでの公開は9/6からで公開初日には日本の歴史、文化に詳しい専門家を招いてのトークセッションを開催。『この世界の片隅に』はフランスでもロングランになっているそうだが、子ども連れは少なく、「自分ひとりは受け止めきれない」という人が親や知人に勧めるパターンが多い。

「フランスでは映画は文化であり、努力して理解するのが当たり前と思われている。子ども向けの上映会で『マイマイ新子と千年の魔法』が上映されたとき、併映されていたのは(フェデリコ)フェリーニの『道』でした。これはすごいなと」

「韓国・富川(プチョン)で開催された「第19回富川国際アニメーション映画祭」に来ていたお客さんのなかには、すでに日本で映画を観ているという人も多かったです。池袋の映画館で初日を観たという人もいました。日本語で話しかけてくれる人がとても多い。興味と関心をきちんともってくれているんだなと感じました」

「日本語で伝えようとしてくれるのはフランスや台湾も同じ。みんな自分の心に映像が刻み込まれたことを自分のことばで伝えようとしてくれる。これは日本とまったく同じです。人の心というのは同じ形をしていて、同じようにしみこんでいくものなんだなと思いました」

「最初はずっとひとりで頑張っていたんですが、作品を通じていろんな人たちと知り合いになったり友情を深めていったりするなかで、ひとりじゃなかったんだ、と実感することができました。今日は、そんな思いをほんの少しだけおすそわけできたらと思っています」

『この世界の片隅に』は第19回富川国際アニメーション映画祭で長編映画コンペティション部門グランプリを受賞したほか、第15回アニログ国際アニメーション映画祭・審査員特別賞、第6回トロント日本映画祭 審査員大賞などを受賞。報告会の2日前の11月6日にはキネコ国際映画祭で日本作品長編部門グランプリを受賞し、2018年9月ドイツで開催されるシュリンゲル子ども国際映画祭で上映されることが決まっている。アニメーションのアカデミー賞と言われるアメリカ・アニー賞のインディペンデント作品賞にもノミネートされた。海外でのプロモーション、トークセッションはこれからもつづくとのこと。

その後、報告書についてはすっかり忘れていたのだが、つい先日「この世界の片隅に」制作委員会から報告書が届いた。全24ページ(表1/2/3/4除く)、フルカラー。海外渡航報告会で話された内容のほか、現地の写真、兼光ダニエル真さんの寄稿、海外キャンペーン風景、海外レビューなども収録。巻末には片淵監督からのメッセージも掲載されている。


(表紙には鷺が飛びよります)

個人的にうーむ、と唸ったのは表4のイラスト。晴美ちゃんがたんぽぽの綿毛を吹いて飛ばすシーンが描かれている。


(イラストは作画監督・松原秀典さんによるもの)

綿毛を飛ばしているのが晴美ちゃん、うしろで綿毛の飛んでいく先を見ているのがすずさん。
(映画のエンドロールで流れた「たんぽぽ」の歌詞を思い浮かべた人も多かったのでは)
あらためてこの映画から伝わってくる手触り、「心がこもる」ということの意味について考えたりした。

いまの世の中、というか世界は「まっとうさ」「誠実さ」「明日へつながる希望」、こういったものを強く求めている気がする。その理由は(残念ながら)それが今の世界で求めても与えられないものであるからだ。そうした状況下でこの映画が注目を集めることは、それがどんなに小さな「片隅」だったとしても、やはり希望と呼ぶべきじゃないかとぼくは思う。

「そんなの悪辣な政治や現実の前ではなんの役にも立たない。愚かだ」と言われるかもしれないが、希望を信じるという行為は、もともと愚かなものなんである。

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