石垣島、というか沖縄自体とくに興味を持っていたわけではない。仕事で行くことになり、例によってまったくなんの予備知識もなく行った。それが今から7年ほど前のことだ。まだ空港が新しくなる前で、長距離バスのターミナルみたいな待合室に魚介類の水槽が並んでいる光景だけが印象に残った。島では川平湾、津波大石などをまわって一泊。行きは直行便、帰りは那覇空港乗り換えで空港からは一歩も出なかったから、沖縄本島についてはなにもわからなかった。
昨年の暮れに沖縄へ行ったついでに石垣島にも寄ることにした。羽田〜那覇便はJALの特典航空券、那覇〜石垣便はANAのポイント利用(一応購入という形になって搭乗マイルもつくらしい)でエアチケットに関しては実質タダ、というところがポイントである。
沖縄の冬は曇りや雨が多く風も吹く。地元の人は寒い寒いと言ってダウンジャケットなど着ているのだが、気温は15度以上あったりする。春から秋にかけてと比較すればたしかに寒々しい光景であるし、風が吹けば体感温度もぐっと下がるので、寒いと言いたくなる気持ちはわかる。
石垣島の空港に着いてみると小雨が降っていた。到着ロビーを出て左にしばらく歩いていくと一番端にカリー観光のバス停がある。1日21往復(42便)で離島ターミナルまでノンストップ、所要時間およそ30分で料金は往復900円だ(片道は500円)。チケットはドライバーから直接買う。昔の空港は市街地に近く、タクシーに乗ればよかったので、この点多少不便になった。
(カリー観光のバス車窓から見た風景。向こうに見えるのはツアー客を迎えにきた観光バス)
離島ターミナルへ向かう直通バスに乗って窓の外を見るとツアー客の人たちが観光バスに次々と乗り込んでいく。行き先は島内にあるリゾートホテルなのだろう。バスを降りて市街地にある宿にチェックイン、食事を兼ねて近くを散歩してみた。シーズン外れということもあって、かなりもの寂しい感じである。
(オフシーズンで閉まっている店も多かった)
(商店街のタイルは八重山地方名産のミンサー織りの柄になっている)
(沖縄関連の書籍が豊富に揃うタウンパルやまだ)
石垣島の宿泊というとリゾート系ホテルを候補にする人が多いと思うが、市街地近辺でリーズナブルに泊まるならBooking.comなどを利用するのがいいと思う。水資源に乏しい離島では小さな宿ほど水道まわりに不便があるが、これはまあ仕方のないことだ。
(今回泊まったホテル。ローシーズン&Genius特典で格安だったが、石垣島は宿泊、外食の相場ともに沖縄本島よりも明らかに高め設定であると思う)
翌日も天気は雨まじり。那覇行きの便は18時台なので一応竹富島へ行ってみることにした。離島ターミナルまで行って荷物をコインロッカーに入れ、フェリーの切符を購入。往復1150円。
http://www.aneikankou.co.jp/water_routes/detail/taketomi
(これまた寒々しい離島ターミナル構内)
竹富島のフェリー発着所には例によって観光バスが迎えにきていて、ツアー客の人たちはこれに乗って集落まで行く。個人客はどうしたらいいのだと思ってまわりを見てみると、くたびれたバンが停まっていて、それがフェリー乗り場と集落を結ぶバスなのだった。片道200円。運転手のおじさんと雑談などしているうちに、あっという間に着いてしまう。降りるときに島内の地図をもらった。フェリー乗り場から集落までは歩いても15分程度の距離だけれど、一度乗ってみる価値はある。
http://www.taketomijimakotsu.info/time.html
(竹富交通のウェブサイト)
あてもなく散歩してみると安里屋ユンタで有名な安里屋クヤマの生家があったり、島を見渡すことのできる唯一の展望台「なごみの塔」など、観光ポイントに次々と出くわす。要するに竹富集落は、とても小さなところなのだ。
(左が安里屋クヤマの生家)
(なごみの塔は老朽化で閉鎖され、すぐ近くのカフェの屋上に展望台ができていた。有料で1人100円だそうである)
(角に雑貨店があり、集落で一番にぎわう交差点。写真奥に見えるのは観光用の水牛車)
フェリーに乗って離島ターミナルまで戻り、昼食を済ませてからバスに乗って空港へ。2013年に開港した新空港は「南ぬ島〈ぱいぬしま〉石垣空港」という名前だ。いかにも新空港といった感じの内装で天井高く、ホワイトを基調としたモダンな雰囲気。ショップやフードコートもあって昔の空港とは比べるまでもないくらいちゃんとしているのだが、自分が離島や南国に求めているのは、残念ながらそういうものではないのだった。
石垣島自体は高級リゾートへの道をどんどん歩み始めているように見える。竹富島にもリゾート開発の話があって、地元の人たちが反対の署名運動をしているそうだ。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/85827
(昨年2月の沖縄タイムスの記事)
大規模なリゾート開発が進めば竹富島の、あの寝とぼけたような雰囲気(いい意味での)は、あっという間になくなってしまうかもしれない。それは石垣島も同じことだ。なんでもかんでも洗練されればいいというものではないと思ったりするのだが、それは部外者の無責任で安い感傷だろうか。