スターバックスが好き、という人は世の中にけっこういると思われるが、個人的にはあまり入りたくない店のひとつである。普段から「ファストフードの店に入らない」「スターバックスに入らない」という原則をなんとなく遵守しつつ暮らしている。代わりに昔からあるような個人経営の店を選んで入る。
なぜスターバックスに入りたくないのか、と訊かれると、まず味に比して値段が高い、インテリアがおしゃれと言われているわりには2階席のソファなどの居心地がよくない、どこに行っても同じスタイルでどこにいるのかわからない、といったところがおもな理由かもしれない。
ダブリンに行ったときに地元の人が話してくれたのだが、なんとダブリンの市内にはおよそ100店舗のスターバックスがあるという。「スターバックス・インベイジョンだね」と、その人は言っていたが(60年代のブリティッシュ・インベイジョンにかけたシャレである)ストリートを歩いていてあれだけ見かけると「侵略」という表現も決して大げさではないという気がした。それにしても人口1人あたりに換算してパブの軒数最多といわれるアイルランドで、なぜあんなにたくさんのスターバックスが必要なのだろう。理解に苦しむ。
パリにもスターバックスはあるが、街中で見かけるのは圧倒的に昔ながらのカフェの方。イタリアはもっとすごくて国内にスターバックスの店舗がない。イタリアはカフェというよりバールというイメージが強いが、「スターバックス・フリー」だとは知らなかった。
聞くところによると、そのイタリアにもついにスターバックス1号店がオープンするらしい。場所はミラノ。ところがこの1号店のオープンが2018年以降に延期になったという。延期になった事情は寡聞にして知らないが、オープンしたらしたで「カプチーノがものすごく高い」「味が薄い」などと、みんないいように批判するだろう。彼らは保守的というより、心地よい暮らし、美味いものを知り尽くしていて、クオリティ・オブ・ライフが劣化することを激しくいやがる。クオリティを守るためなら多少不便になってもしかたない、というところもあって、そういう部分はもう少し見習ってもいい気がする。
なんだかスターバックスの文句ばかり書いているが、とくにそれを言いたかったわけではなく、好きな喫茶店がまた閉店してしまった、ということを書こうと思ったら、いつの間にか横道にそれてしまったんである。
喫茶店の名前は「CAFE STREET CHATAN COFFEE」といい、那覇市の牧志公設市場のすぐ近くにあった。まさに裏路地といった感じの細い路地を入っていくと、パラソルの影にテーブルがふたつ置いてある。すぐ奥の店内はカウンター席だけだった、と記憶しているのだが、もしかすると違ったかもしれない。(カウンター席に座ったことはなし)
(写真は今年4月に行ったとき)
この店のえらいところは普通のコーヒーが一杯250円というところである。東京のこじゃれたカフェでアイスコーヒーなど頼むと500〜600円くらいするので、感覚的には半額かそれ以下。目の前には食べ物を売る店などがあって風光明媚とは言いがたいが、雑然とした裏路地が好きな自分としては、こういう店は理想に限りなく近い。
ところが先日Google Mapで那覇市内を調べていたらCHATAN COFFEEのショップ情報に「閉店」と書いてあるではないか。店舗情報を調べるとき、Google Mapはけっこうあてになることが多いのだが(とくに海外)閉店したという情報を東京に居ながらにして知ることができるのは、いいことなのか、悪いことなのか。
先ほどGoogle Mapを再確認してみたところ「閉店」というステータスはなく、ユーザーのレビュー、店舗情報なども削除されていた(投稿された写真はまだある)。一方、沖縄観光情報サイト「たびらい」の記事には【一時休業】という表記がある(おそらく過去の紹介記事に【一時休業】という文字を付け足したのだろう)。
一時休業ということは、また開店する可能性もあるということだろうか。
http://www.tabirai.net/sightseeing/column/0007015.aspx
ぼくは那覇の雑然とした路地がとても好きなのだが、こういう街並みはちょっと前の東京にもけっこうあった。多くは元闇市、元赤線、あるいはその周辺といった場所であって、そういうところにいるとなんとなく安らぎを憶えるのは、これまたどうしてなのか、自分でもよくわからない。同じようなことは大阪、ニューオリンズ(アメリカ・ルイジアナ州)でも経験したが、これといって思い当たるところはなし。場所自体に磁場のようなものがあるか、土地と人間の間に相性があるか、もしくはその両方なのかもしれない。
こういう性癖なのでタイやベトナムあたりに行ったら、一発でハマる可能性もけっこう高いのではないかと思われる。