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プラクティカル版・機内持ち込み考 | 本と映画とMusic
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プラクティカル版・機内持ち込み考

機内持ち込みの荷物だけで海外旅行ができたら、どんなに身軽でいいだろうと、いつも思う。

単純に荷物を減らすなら、もっていく着替えの量を減らせばよい。コインランドリーで洗濯すればいいんである。1時間くらいを見知らぬ国のコインランドリーで費やすことになるが、これはこれで面白い。昔は日程の半分くらいを目安にパッキングして、旅程半ばに予備日を設け、そこで洗濯をしていた。

預け入れ荷物を入れるのはナイロン製の巨大なスポーツバッグ。色は黒で、これは80年代後半に買ったもの。カメラバッグをもっていくようになってからは折りたたみ式のキャリア(ウィールは大きい方が安定してよい)にふたつのバッグを載せ、フックのついたラバーバンドで留めていた。スポーツバッグと折りたたみ式キャリアは預け入れ荷物で、カメラバッグは機内持ち込み。90年代までの旅行スタイルは、こんな感じだった。

あと必要なものといえば、数冊の文庫本、ウォークマン、タバコとライター(昔は機内でタバコが吸えた)くらいのものである。これはカメラバッグの余ったスペースと、着ている服のポケットに簡単に収まった。スマートフォン、ラップトップPC、各種ケーブルやモバイルバッテリーなどがない時代は、これでよかった。

そんな身軽な(といってもカメラバッグがあったので、実際の重量はかなり重かったのだが)旅行スタイルをとりもどすべく、機内持ち込みについて調べてみた。

ご存知のようにLCCを筆頭に、機内持ち込みのサイズ、重さの制限は年々厳しくなる傾向にある。まずは国内大手、JALとANAから。

https://www.jal.co.jp/dom/baggage/inflight/
https://www.ana.co.jp/domestic/prepare/baggage/?menu=carry-rule

いずれも100席以上の飛行機の場合「3辺の合計が115㎝(55×40×25㎝)以内」、「身の回り品を含めた重量は10㎏以内」となっている。機内持ち込みサイズにはキャスター、ハンドルも含まれる。身の回り品というのはハンドバッグや傘、PCを入れるブリーフケースなどのこと、とある。

といっても国内便の機内持ち込み基準は、かなりゆるい。サイズが数㎝オーバーした小型スーツケース、空港内で買ったおみやげ、A4サイズが入るバッグなどをもっていても、余裕でセキュリティーを通過できる。たとえば自分が出張などで使っているSamsonite WINFIELD 2 20″ SPINNERの場合、キャスター、ハンドルを入れた高さは55㎝を2〜3㎝上回る(幅、厚みはレギュレーション内)ものの、寸法を測られたのは今までに1回だけ。このあたりの事情については出張で国内便を使う方々の方がよくご存知だろう。

ちなみにこのスーツケース、Amazon.comのレビューでは「ものすごくキズがつきやすい(スクラッチ・イーズリー)」と評されているが、機内持ち込みで使っている分には、さほど気にならない。

で、問題は海外の機内持ち込みである。わりと最近の機内持ち込みサイズ、重さ一覧はこちら。

ページなかほどにCarry-On Luggage Size Chart by Airlineのリストがある。デフォルトはImperial(インチ、ポンド)表記だが、Metricに切り替えれば㎝、㎏表記に換えることができる。LCCは若干厳しい傾向だが、平均的なところをとると、サイズはおおむね55×40×23㎝、重さは7〜10㎏といったところ。問題はサイズ、重さのチェックがわりと厳しいことで、もし搭乗前に機内持ち込み不可となった場合、けっこう高い料金を払って預け入れしなければならない(LCCなど、これで儲けているという話もある)。

スピナータイプのスーツケースでは、とくにキャスター部分の高さが問題となりそうだ。キャスターで嵩上げされた部分はデッドスペースになるわけで、この点ではウィールがビルトインされた2輪タイプ、あるいはバックパックの方が有利だろう。もうひとつの問題は重さ。重量制限7〜8㎏とするとバッグ自体の重さ(1〜1.5㎏程度)を差し引いた実質的な重量制限は5.5〜7㎏ほど。ラップトップPCや充電器、各種ケーブルなどをもっていかなければならない場合、これらを入れた重量で着替え、身の回り品などをクリアするのは、けっこう難しそうだ。

旅慣れた人が機内持ち込みにこだわる理由はバゲッジロストがない、ターンテーブルでの待ち時間が省ける、旅をローコストで済ませることができる、などさまざまだが、バゲッジロストに関しては直行便を利用したりロストの多いハブ空港を避けることで、ある程度回避できるような気がする。個人的に乗り継ぎを避けたいのはヒースローとCDGで、経験的にいいなと思うのはオランダのスキポール空港(フィンランドのヘルシンキ空港もよさそうだが、利用したことなし)。一方で「預けたバゲッジは、ときにロストするものである」と悟りを開いてしまうのも、ひとつの旅のあり方だという気がする。

コストについてもLCC以外の航空会社であれば預け入れ無料であることが多いし、LCCを利用する場合でもオンライン予約すれば、当日カウンターで払うよりも割安で済む。高速鉄道が整備されているEU圏の場合、LCCより電車利用の方が安いというケースも多い。

ターンテーブルで荷物が出てくるのを待たなくてよい、というのは大いに魅力だが、持ち込み荷物の重量制限を考えると選ぶだけの積極的な理由がない(頻繁な洗濯、荷物を減らすことで不便になることも避けたい)。

結局のところ、ぼくはバックパッカーでもなければ、無駄の排除に燃えるミニマリストでもないということなのだろう。昔の自分に会ったら、お前、堕落したなと言われるのかもしれないが、徹底してわがまま、かつ楽しさをもとめる旅というのも、それはそれで悪くないと思う。要するに旅の目的が変わったのだ。

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