バブルの頃、トーマス・マックナイトという画家の絵がちょっとだけ流行った。流行りものに弱い自分は、もちろん画集買ったりしたのである。
「Windows on Paradise」の日本版は1990年初版。写真は再版された海外版で、日本版とは表紙のデザインがちょっと異なる。
マックナイトという人はエッジの立ちすぎたモダン・アートに疑問を感じて高級リゾートの風景、とくにホテルのスイートルームから見える風景をよく描いた。
画面のなかに人の姿はなく、空にはかなりの頻度で月が出ている(昼間であっても)。月は満月か三日月であることがほとんどだ。結果、実際の風景に仮託しているが、じつはこの世の風景ではないのではないかという雰囲気が濃厚に漂う。その浮き世離れしたところがバブルの雰囲気に合っていたのかもしれない。
写真集や画集って本当にたまに見るだけなのだが、先日ものすごく久しぶりにページを繰っていたら、見覚えのある風景に出くわした。SANTA MARIA DEL GIGLIO。水上バスのバス停で、ここで船から降りるとひたすら狭い通路を歩くはめになるという、困ったところです。
自分もホテルから近いという理由で空港からこのバス停に直行し、延々とスーツケースを転がすはめになったことがある。あんまりいい思い出ではないけれど、そのバス停を描いた画家の画集が自分の家にあるとは思わなんだ。
(Originally posted on 9.3.2015)
(9.5.2017 追記)
- マックナイトは同じエリアのホテルから見たテラス風景も描いていて、それは自分が宿泊したホテルだったことが判明。
- SANTA MARIA DEL GIGLIOというバス停は、その後廃止されてしまった。