フェラン・アドリア先輩


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2011年の映画「El Bulli Cooking in Progress」は、2011年で営業を終了した世界的有名レストラン、エル・ブリ(エル・ブジと表記されることもあるが、レストランがあるカタルーニャ地方の発音ではエル・ブリとなるそうだ)の舞台裏を追ったドキュメンタリー。

エル・ブリは半年だけ営業し、残りの半年は休業、その間に新メニューの開発をするという、常識では考えられないような営業スタイルを採っていた。この映画が追ったのは、2009年シーズン前の半年間だという。

といっても、その半年間の記録は全然エキサイティングではない。

1)新しい食感や味わいを求めて、ひたすらトライ&エラーを繰り返す
2)これならいけそうだという候補を記録し、膨大なリストを作る
3)それらを分析、プロファイリングしてマッピングする

以下、これを延々と繰り返すだけなのだ。

観ている途中で、これは本づくりに、とても似ているなあと思った。ネタを集め、プロファイリングしてレイアウトを組み、ある企画の意図のもとに何度も並べ直す。要するに、フェラン・アドリア率いるエル・ブリのスタッフは、本づくりと同じ「編集作業」を延々と繰り返していたのであった。

しかし、ドキュメンタリ映画としては、ちと厳しい。

エル・ブリにおけるドラマは食べたときの食感や味わいにこそあるわけで、それは映像では体感できない種類のものだからだ。たとえば「これはおいしいですね」みたいなことを食べている客に言わせても、安手なテレビ番組みたいになってしまう。映像記録としては貴重だが、映画としては盛り上がりに欠ける。舞台裏とはそういうものだとはいえ、なんとも苦しいところだ。

閑話休題。

エル・ブリでは毎シーズン、新しいスタッフが雇われ、開業前に新メニューの作り方を徹底的にたたき込まれる。スタッフの多くは若く、これからキャリアを積んでいこうという人たちだ。その様子を見ていて、なんとなく自分の修業時代を思い出したりした。

’90年代初頭。とにかく仕事のことばかり考えていて寝る間も、休みもなく、仕事以外にできることといえば、わずかな睡眠時間の前に近くの書店で買った本を読むことくらい。この書店は某大学のすぐそばだったこともあり、品揃えは、かなりよかった。そんなわけで、ぼくは今でも’90年代前半に起きた事件、流行したものなどを、ほとんど知らない。

一番びっくりしたのは、フェラン・アドリアが自分より3歳しか年上じゃないということ。この映画に映っているフェランは、なんと今の自分より若いのだった。

(Originally posted on 12.25/2014)