ビルバオの魅力は、どこにある


ビルバオ。

 

 

フランク・ゲーリーの建築(写真じゃなくて実物)を見たのは、5年くらい前、ヴィトラの取材に行ったときのこと。ヴィトラミュージアムとヴィトラ本社を見てすぐファンになり、その後ドキュメンタリー映画(Sketches of Frank Gehry 2007年)を観て「50になったら自分へのご褒美としてビルバオ・グッゲンハイムへ行こう」と決心したのだった。そしたら予定より早く、そのビルバオへ行けることになったんである。

かつて鉄鋼と造船業で栄え、その後すっかり寂れてしまったビルバオの街が復活したのは、新市街の開発によってだった。しかもそのほとんどを超モダンなデザインとした。
ノーマン・フォスターによる地下鉄、サンティアゴ・カラトラバによるズビズリ橋とビルバオ空港、磯崎新による磯崎タワーなどなど。その決定版にして最終兵器が、1997年に完成したフランク・ゲーリーのビルバオ・グッゲンハイムだった。ビルバオ・グッゲンハイムを訪れる観光客は年間100万人を超え、街もすっかり輝きを取り戻した。

……というのがビルバオ成功物語のあらましなのだが、期待していたグッゲンハイムは、中へ入ってみると意外にも案外コンサバで、ヴィトラミュージアムのような驚きはなかった。復活の象徴となった新市街も、おしゃれなはずのデザインホテルも15年以上を経て、なんとなく古びてしまっている。こういうのが一番いけない。

トラム(路面電車)と地下鉄の連絡もあまり良いとはいえず(効率良く移動するためにはバスを利用しなければならない)、どの駅を降りてもまわりは雑然としている。なんというか、「作りかけでほったらかしにされた」感がかなりある。現実のビルバオは、そんな街だった。

一方、ガイドブックにはほとんど載ってない旧市街は雰囲気もあってなかなかよかった。
これまたほとんど紹介されてないけれど、ケーブルカー(地元ではロープウェイと呼称しているが、どっからどうみてもレールの上を走っているのでファニキュラー)で上がった展望台から見下ろす街の景色もすばらしい。ただし乗り場はプロジェクトみたいな団地街のなかにある。そういうところがまた、じつにビルバオ的だと思う。

 

 

そのなかでまったく古びてないというか、みんなから愛されてるなあと思ったのはジェフ・クーンズの作品「パピー(←花で象られた子犬)」である。
結局「グッゲンハイムの外観」と「パピー」だけがタイムレス・デザインだったということなのかもしれない。

(Originally posted on 9.25.2014)